地球でハナだけ/チョン・セラン〜概要・あらすじ
題名 | 地球でハナだけ |
著者 | チョン・セラン |
訳 | すんみ |
出版年 | 2022年8月 |
ジャンル | SF・恋愛 |
ページ数 | 228ページ(あとがき除く) |
ハナは、デザイン学校を卒業して、古着を仕立て直す仕事をしている。
ハナには学生時代から付き合っているキョンミンという恋人がいるが、
キョンミンはお金が貯まれば、海外へ旅行へ行くということを繰り返していて、
将来があるのかないのかわからない。
理解はしているつもりだが、不満もある。
そんな時、キョンミンがカナダに行き、そこで緑の閃光に包まれた、という
ニュースが流れる。
そして、帰ってきたキョンミンは、ハナが知っている彼とはなんだか違っている。
彼に一体何があったのか。
「地球でハナだけ」感想〜好みのSF展開
作者はNetflixドラマ「保健教師アンウニョン」の原作者。
原題は「保健教室のアン・ウニョン先生」SF展開も納得である。
宇宙がどんなふうか、あまり想像したことがない。
宇宙は広いから、きっとどこかに宇宙人がいてもおかしくないだろうなあとは思う。
宇宙のどこかから、地球は観察されていて、恋をして宇宙人が恋人の姿を乗っ取って
自分の元にやってきたなら…。
ハナの元にやってきた宇宙人は決して暴力的でも一方的でもなく、深い愛情で穏やかに
ハナに接していて、こんな宇宙人ならばいいかもしれない、とも思う。
そもそもハナの元にやってきた宇宙人は攻撃的なことのない性質の宇宙人らしい。
(自分で完結し、全体が一個体のようだとか。鉱物みたいな存在らしい。)
ハナは、地球人が戦争や争いごと、破壊行為を繰り返し、環境に悪いことばかりをしていることを
恥じている。
ハナは、エコロジストで古着を仕立て直し地球環境にも配慮した生活をしている。
その時点で私とは違うから、私が宇宙人に見初められることはまずないな、と思う。
一方で、元恋人となるキョンミンは自分の「どこかへ行きたい」衝動を抑えられない人で、
お金を貯めては旅行へ行き、刹那的な楽しみを繰り返す人。
それって、地球人の悪いところをギュッと濃縮しているようにも思う。
欲望のままに生きて、最後は寿命も縮めてしまう。
自分の欲望を優先し、ハナが地球で待っているのもお構いなしに、自分の体を宇宙人に
差し出して宇宙の果てへと旅立ってしまう。
彼を地球に、韓国に縛り付けていたものはハナだけだったのだ、とハナ自身も気がつき、
彼の性分を理解し、それでも彼が自分を選ばなかったという薄情さに嫌気がさしてしまう。
宇宙人が、どんな風にハナに愛情をそそぎ、どんな風に感じ、ハナがどのようにそれを受け入れていくのか、
ドラマではこういう宇宙人との恋愛はあったけれど、こうして小説で読むのは初めてかもしれない。
宇宙的展開でありながら、そこに描かれているのは
普遍的な愛情。そういう細やかな愛情、心情の変化が文章によって書き起こされた時、
ドラマとは違う、深い意味を感じるように思う。