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【読書記録】吉田修一/「ミスサンシャイン」感想・あらすじ

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【読書記録】吉田修一/「ミスサンシャイン」感想・あらすじ

JamesDeMersによるPixabayからの画像

吉田修一「ミス・サンシャイン」読了。

感じいったいくつかの点について綴りたい。

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「ミスサンシャイン」はシロかクロか

吉田修一さんといえば、シロ吉田とクロ吉田があると言われていて、

その作風が二つに分かれる。

シロといえば、「横道世之介」に代表されるような、比較的ポップな感じのもの。

クロといえば「悪人」や「怒り」のような犯罪をテーマにしていたりと、暗い感じのもの。

今作「ミスサンシャイン」を読み始めたとき、おっこれは「シロ」だな、と感じた。

主人公、一心からは世之助の匂いを感じたからだ。

主人公、一心が大学院の教授からアルバイトとして女優・和楽京子の倉庫整理を頼まれるところから物語はスタートする。

一心は自分を「平凡」と評する。その平凡ながらも、好感の持てる態度から、一心はすぐに和楽京子こと「鈴さん」たちの

生活にすぐに溶け込む。

この、誰の懐にもすんなり入る感じ、飄々とした感じ。そこから「世之助」を感じたのだが、

読み進むにつれ、一心の「平凡だけど平凡に終わらない感じ」が読み取れてくる。

世之助もまた平凡そうであって、独特な魅力があるのだが。

「シロ」か「クロ」で分けるなら、「シロ」だろうけれど、

そこに付随するテーマは「シロ」「クロ」では分けられない。

世の中が「シロ」「クロ」では分けることができないように。

Huda NurによるPixabayからの画像
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「ミスサンシャイン」一心に思う「平凡」とは

一心は自分を平凡だと言う。

長崎から上京し、まずは普通に就職し、それなりの企業に就職し、

ふと辞めてしまう。そして、大学院に入り直し、

普通の恋をしている。

「普通」なのだと言うけれど、私には彼は

普通であることの大切さ、尊さ、儚さを存分に、そして痛切に知っている、

偉大な普通の人である、と思う。

彼の恋する桃ちゃんと関係がうまくいっている時、一心はその「幸せ」にふと不安になる。

「普通の幸せ」に怯えるのは、「普通の幸せ」がいかに儚く、脆く、危うく、そして尊いか

きちんと知っているかではないかと思う。

そこには、きちんと彼の過去が関係している。読み進めれば、そこに彼の

「普通に幸せ」であることを大切にする所以がある。

pieonaneによるPixabayからの画像
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「ミスサンシャイン」のヒロイン•和楽京子、そして鈴さんの魅力

女優・和楽京子こと鈴さんは大変魅力的な女性である。

その魅力に、開始数ページで私もすっかり虜になる。

作品中に散りばめられた、数々のエピソードはまるで、和楽京子その人が実在するかのようである。

例えば、鈴さんがタクシーに乗る描写

鈴さんは背中をつけずに座るので、まるでジェットコースターにでも乗っているように、シートのグリップに掴まっている。 ただ、

そのピント伸びた背筋のせいか、普通の個人タクシーがまるで馬車のように思えてくる。

こうした具体的なエピソードは、まるで誰かその人本人を描写しているようである。

女優は皆そうなのだろうか。

「馬車」という描写で、私の頭の中にその優雅さ、凛とした美しさがしっかりと伝わってくる。

80歳を超えてもなお、魅力的な女性。

こんな風に年を取れたなら…女優じゃないから難しいか。

とりあえず背筋を伸ばしてみよう。


まるで実際にあるかのような映画の描写

和楽京子の荷物を整理するバイトの一心。

荷物を整理しながら、過去の作品に触れる。

戦後から日本映画の最盛期を駆け抜け、ハリウッドまで進出する和楽京子は

数々の作品に出演している。

その作品を一心が観るシーンがある。

それは、まるでその映画が本当に実在するかのように、

あらすじだけではなく、細部まで作り込まれている。

吉田さんの作品は、映像のような描写がすごくよくできていると思うのだが、

映像を見ながら、切り取っているような…

デビュー時の「最後の息子」は私の大好きな作品の一つだが、

それも、主人公がビデオカメラを回しながらそのカメラ越しに

物語が進行していくという形で、まるで映像を見ているように頭に浮かぶ。

そんな風に頭の中に実際の映像が作り込まれているのか、

「ミスサンシャイン」の中で描かれるその映画のその映像を検索して

観られるものならこの目で見たいと思うほどに、

実に鮮やかに描かれている。

和楽京子が出演する、その映画の迫力、演技の息遣いまで聞こえてきそうである。

Michaela WenzlerによるPixabayからの画像

吉田修一の故郷・長崎への想い

和楽京子も一心も長崎の出身である。

そこには原爆という重いテーマも関わってくる。

一心は戦後の世代だが、長崎では小さい頃から当たり前のように

原爆の詳しい学習を何度も何度も繰り返していくそう。

そして彼女は亡くなり、私は生きた。

彼女と私を何かが分けた。

わたしたちを分けたその何かが、私は憎くてなりません。

(中略)

膻中というツボがあります。

(中略)

寂しくてどうしようもない時、悲しくてどうしようもない時、

ここを押さえてみてください。

私たちは大切な人を大勢失いました。

私も、皆さんも、あの戦争で大切な人を大勢失いました。

寂しくで眠れない夜、ここを押してみてください。

そしてゆっくりと深呼吸をしてみてください。

和楽京子さんの、吉田修一さんの言葉に励まされながら、

失った誰かと、生きていく自分に思いを馳せる。

一心と鈴さんの共通点である長崎にも行ってみたい。

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