湊かなえ「カケラ」あらすじ・概要
題名 | カケラ |
著者 | 湊かなえ |
ページ数 | 305ページ(文庫/解説除く) |
ジャンル | ミステリー |
美容外科医の橘久乃は幼馴染の志保から「痩せたい」という相談を受ける。
カウンセリング中に出てきたのは、太っていた同級生横網八重子の思い出と、その娘の有羽が
自殺したという情報だった。
少女の死をめぐり、食い違う人びとの証言と、見え隠れする自己正当化の声。
有羽を追い詰めたものは果たして一体ー。(文庫本あらすじより)
湊かなえ「カケラ」感想〜『美しい』という不確かなものを巡る主観の不確かさ
湊さんお得意の「独白」形式の本書。
独白形式であり、さらに語る人間が次から次へと移っていくその形式は
一体どの視点が正しいのか自分自身わからなくなる。
真相に近づくようで、真相から遠のいていく気がする。
聞き手は一貫して橘久乃という美容外科医だが、
そこに対する人間は、久乃に攻撃的だったり、距離を取っていたり、
こびを売っていたり、と様々変化する。
この独白形式にも関わらず、語っている人の人間性を見え隠れさせる、というのが
湊さんのすごいところだと思う。
会話の端々、語る内容からその人間性が見えてくる。
語っている人間は自分を正当化しようと話しているのに、
そこに読んでいるこちらに引っ掛かりを持たせるのだからすごい。
さらに「美」というものに対するそれぞれの価値観が、人によって全く違う。
それがこの話をさらに複雑にしていく。
その価値観のすれ違いが、人を追い詰めたり、死に追いやったりしてしまう。
「美しくなりたい」その美しさの価値観は色々あるのですよ、と言いつつ、
いつまでもなくならない悩み。
どこかで聞いたような事件を掘り込んで広げて、そこに人間同士の内面の薄暗いところを
剥き出しにさせるのが…湊さんのすごいところだと改めて思う。
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こういうミステリーもあるのか、と私は目から鱗だったこちら。
人が死んだりするわけでもない、何ということのない違和感から広がっていくミステリー。
私の中で一番好きな湊かなえ作品である。