「目の見えない白鳥さんとアートを見に行く」あらすじ・概要
白鳥健二さん、五十一歳、全盲。
年に何十回も美術館に通うー。
「白鳥さんと作品を見ると本当に楽しいよ!」という友人マイティの一言で、
アートを巡る旅が始まった。
絵画や仏像、現代美術館を前にして会話をしていると
新しい世界の扉がどんどん開き、
それまで見えていなかったことが見えてきた。
アートの意味、生きること。障害を持つこと、一緒に笑うこと。
白鳥さんとアートを旅して、見えてきたことの物語。
(本書・帯より引用)
【感想】アート本?障がい者に関する本?いいえ、これはロードムービー
アートに関する本なの?
「目の見えない白鳥さん」とアートを見にいき、感じたままを話す。というワークショップがあったという。
白鳥さんは生まれつきの全盲で、でも「盲者らしくない」ことを求めてアートを見に行くことを始めた。
そこに付き添い、白鳥さんにアートを説明するうちに、説明している側がアートについて新しい発見をする、という
そこには「ウィンウィン」の関係があるのだ、という発見。
それが楽しい、と白鳥さんとアートを見に行くことにのめり込んでいく作者。
これを読めば、じゃあ、美術に関しての深い知識が得られるのか?
いいえ、白鳥さんはそんなことを求めているのではない。
ただ、それを見て「あなたがどう感じたか」をありのままに感じてほしい、ということ。
見に行ったアートは現代アートが多いが、絵画もある。
目の見えない人とアート、手で触れるものを見に行くのか、そういうわけでもない。
一対一で対話するわけでもない。
時には複数で、いろんな意見の対立を繰り返しているだけの場合もある。
子どもも大人も、男性も女性も入り混じって意見を交わす。
そこに時々、白鳥さんが口を挟む。
色を説明したり、表情を説明したり、光の加減を説明したり…
障害に関して学べる本なの?
生まれた時から全盲の白鳥さんは、すべてのものを「見た」ことはない。
ただ、「概念」として「知っている」だけだ。
赤も青も黒も表情も、車の形だって、空だって。
「そういうこと」だということを、作者は白鳥さんと話すことで知っていく。
全盲の人の世界がどんなものなのか、どんな感覚なのか知っていく。
すると、作者の世界が広がるという。これまで知らなかったことを知ることは、
新しい世界を知ることになる。
海外で生活をしていた作者は、日本だけではない世界を知っていて、いろんな人がいることを知っている。
全盲の人と出会ったのは白鳥さんが初めてであり、その人を知ることでまた新しい世界を知ることができた、
と作者は言う。
「世界」はいろんな世界があり、海外に飛び出すだけじゃない。いろんな世界があって、
自分の知らない世界を知っていくことが、それもまた「グローバル」なのだな、と感じた。
けれど、作者はここで、障害に関する認知を広めようとしているのか、というとそうでもないと思う。
気の合う人と時間を共有すること
白鳥さんもそんなことを求めてこんな活動をしているわけではない。
白鳥さんは「やりたい」からやっているだけ。
作者も、白鳥さんと「いたい」から一緒にいるだけ。
そう、これは気の合う人たちとの「ロードムービー」なのだ。
彼らは、アートを求めて、時には車を走らせる。
時には新幹線で遠くへ足を運ぶ。
そこにアートがあるから。
一緒にいて楽しい人がいるから。
彼らの共通項がアートだっただけだ。
彼らはアートのこと以外にも話す。9.11のことや生き方のこと、マイノリティのこと、
歴史のこと…別に誰かに語って聞かせるためではなく、
互いに気心が知れて話したくて、互いを知るために相手を理解するために、
ただ話したくて話しているのだ。
これはアートに関する本でも、障がい者に関する本でもないと思う。
気の合う仲間との時間がどれだけ楽しくて、かけがえのないものかを綴った
ロードムービーだと私は思う。
電子書籍と紙の本、お好みで選べる「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」の中で行ってみたい見てみたいと思ったところ3つ
マリーナアブラモヴィッチ「夢の家」
泊まって体験して夢を見るための宿泊施設であり、芸術作品だとか。
棺桶みたいなところに寝るらしいのだが、不気味な感じ。赤いし青い。
私は泊まってみたいけど、家族では無理だろうなとか考えたり。
それこそ気の合う友人と泊まってみたいかも。
でもそんな共通意識を持てる友達がいるのか。
https://www.echigo-tsumari.jp/travelinformation/dreamhouse/
水戸芸術館
白鳥さんがマッサージ店も開いていたことのある美術館だとか。
作者に白鳥さんを紹介した「マイティ」さんはこの水戸美術館の人で、
水戸芸術館と白鳥さんの関係性は深く、過去にはツアーもあったとか。
全国各地にはいろんな美術館があって、それぞれ独自の催しがあるのだなあと知る。
近場の美術館には足を運ぶものの、それでも特別展ばかりで常設展や
普段のイベントにはあまり参加したことがない。
もっと足を運んでみたいし、なかなか水戸まで行くことはないけれど、
美術館を目的にした旅行も楽しそうだなあと思えた。
https://www.arttowermito.or.jp/about/
水戸だったらプラザホテルが古風で泊まってみたいはじまりの美術館
こちらも地方の美術館。
裸足で鑑賞する美術館らしい。
障がいを持つ方のアート「アール・ブリュット」とされるらしいが、
それだけではなくいろんな人の作品がフラットに展示されているそう。
ホームページを見るだけでもなんだか楽しそうな、ほっこりするような施設だ。