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韓国映画「それだけが、僕の世界」作品概要
タイトル | それだけが、僕の世界 |
ジャンル | ヒューマンドラマ |
キャスト | イ・ビョンホン、パク・ジョンミン、ユン・ヨジョン、ハン・ジミン |
監督 | チェ・ソンヒョン |
公開年 | 2018年 |
映画「それだけが、僕の世界」あらすじ
イ・ビョンホン演じるのは、落ちぶれた元プロボクサー。
その日暮らしのジョハは、ある日17年前に自分を捨てられた母親(ユン・ヨジョン)と再会する。
母親は26になるサヴァン症候群の息子ジンテ(パク・ジョンミン)と二人暮らし。
ジンテは一度聴いただけでその曲を再現してしまうピアノの才能を持っている。
母親を恨んでいたジョハだったが、ひとまず二人と暮らすことに。
突然出会った弟に振り回されるジョハ。
映画「それだけが、僕の世界」感想
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サヴァン症候群✖️天才✖️兄弟というのはよくある設定ながら、
演じる人間によってやはり趣も魅力も違うもの。
U-NEXTにて配信中。(2022年7月現在)
感想に少しネタバレを含みます。未視聴の方はご注意ください。
「それだけが、僕の世界」に見るイ・ビョンホンの魅力
イ・ビョンホンが演技が上手いのも、魅力があるのも
言わずもがななことだけれど、やっぱり言いたい。
イ・ビョンホンの演技がいい。
イ・ビョンホン演じるジョハは中学生の頃に母親に捨てられた。
その傷を抱えながら一人で生き抜き、プロボクサーとしてアジアチャンピオンにまでなった。
自分を捨てた母親を恨みながらも、その日暮らしの身ゆえに一緒に生活し始める。
粗暴で上品さもないジョハ。
でも、本当は面倒見のいいジョハ。
母親に頼まれて弟の面倒を見るが、サヴァン症候群の弟に振り回される結果に。
警察沙汰になってしまい、母親に怒鳴られる。
「どんな育ち方をしたんだ!」
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言いたいことはたくさんあるだろう。
自分を捨てたのは母親なのに、自分は悪くないのに、
たった一人で生きるしかなかったのに、
何も聞かずに弟だけを庇うなんて。
初めて二人が住む部屋に入った時、そこには弟と母親が一緒に写った写真がたくさん飾ってあった。
それは、自分が得ることのなかった時間である。
自分にはなかった母親との楽しい時間。
弟を羨む気持ちがないと言ったら嘘になるに違いない。
それでも自分は弟を危険な目に合わせたわけではないのに、
母親から言われた一言は痛烈に胸をえぐったに違いない。
しかし、その怒りを母親にぶつけることはしない。
怒りに身を任せ、拳ウィ闇雲に振り回してはボロボロになるジョハ。
やるせない、それでも明るくひょうきんな男。
母親のことを許せない気持ちはあれど、全て悪いのは暴力を振るっていた父親であることは
わかっており、母親のことを哀れにも思っている。
母親が哀れでならず、やはり母親に優しくされる時間が愛おしい。
そう思えばこそ、弟のことも想う。
そういう悲しさが全てイ・ビョンホンの演技によって、短い時間に
濃縮して表されている。
ああ、やっぱりイ・ビョンホンの演技は素晴らしい。
「それだけが、僕の世界」見どころ多数・音楽・ユンヨジョン
「それだけが、僕の世界」ピアノの音色が好き
サヴァン症候群であるジンテは、ピアノの演奏を一度聴いただけで
それを完璧に再現する才能を持っている。
そして、そのピアノの音色がまた素晴らしい。
ジンテが好きなピアニストをハンジミンが演じているが、
そのガユルの運転する車とジョハが接触事故を起こすことで、つながりができる。
ガユルは数年前の事故以来、ピアノから離れていたが、ジンテの演奏を聴くことで
再びピアノに向かうようになる。
そのジンテが弾くピアノ。
演じるパクジョンミンさんが実際にピアノを弾いているようだが、
音色はきっと差し替えだと思う。
このピアノ、OSTのリストを見る限りではソン・ヨンミンというピアニストが
演奏している模様。
(このOST、LINEミュージックで配信されているのしか見つけられなかった)
このピアノの音色が優しくて、はっと惹きつけられる魅力がある。
ピアノに詳しいわけじゃないけれど、どれも一度は聴いたことのある曲ばかりで、
これは好きな音色だ、とは言える。
「それだけが、僕の世界」に見る女優/ユン・ヨジョン
ジンテとジョハの母親を演じるのは、「ミナリ」のユン・ヨジョン。
彼女の声の響きなのか、彼女のイントネーションなのか、詳しくはわからないが、
彼女が発するセリフは独特の響きを持って、心に届く。
訴えるような、悲しい引っ掛かりがある。
夫に毎日暴力を振るわれ続けたインスク。
耐えきれずに家を飛び出し、絶望から命を断とうとしたところを救ってくれたのが
おそらくジンテの父親。
子どもと父親は別人格、別の人間、頭ではそうわかっていても
どうしても重ねて見てしまう瞬間があるのではないだろうか。
人間だから、感情的になってしまったその一瞬に。
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優しい夫から生まれたジンテは障害は持っていても暴力的になることはない、
優しい天使のような子。
一方で、自分を殴り続けた人の息子にはもしかしたらその血が受け継がれているかも
しれない、そんな思いがよぎるのではないだろうか。
けれど、理性的に考えればそんなことはなく、
粗暴ながらも優しいところをもつ人間に育ったジョハもまた、
自分の息子であることをきちんと思い出せる賢い女性。
その葛藤、苦悩、ひとときの安らぎが見えて、
女優ユンヨジョンの演技に涙が誘われる。