「宙ごはん」概要・あらすじ
タイトル | 宙ごはん |
作者 | 町田そのこ |
出版社 | 小学館 |
ページ数 | 全365ページ |
装画 | 水谷有里 |
装丁 | 大久保伸子 |
生まれた時から、宙(そら)には二人の母親がいた。
育ての「ママ」と産みの親である「お母さん」。
どちらも大切な二人。
しかし、小学校入学を機に宙は、産みの親であるお母さん・花野(かの)と
暮らし始めることになる。
時々、会うお母さんは綺麗で自由で素敵な人だと思っていたけれど、
一緒に暮らし始めると、「理想のお母さん」とはかけ離れていた…
町田そのこ「宙ごはん」感想〜いろんな家族のカタチと少女の成長と美味しいご飯
町田さんの作品も今作で4作目。
町田さんの作品に共通して問われているのは「家族のカタチ」だろうか、と思っている。
「52ヘルツのクジラたち」「星を掬う」そして「宙ごはん」で、
共通して血の繋がった家族との不和や、血の繋がらなくとも家族として
支え合う人々が描かれているように思う。
「宙ごはん」でも実の母親である花野さんと生活を始めると、なかなか彼女を受け入れられない
宙がいたり、血は繋がらなくても「父親」のように見守ってくれる「やっちゃん」がいたりする。
血が繋がっていなくても、家族なんだよ、人は親だけに育てられるんじゃないんだよ、
誰かの愛情が誰かを作り、そして、命が繋がっていくこともあるんだよ、
そんな風にずっと訴えられているように思う。
そして、これまでとはちょっと違う、と感じたのが、
「少女の成長」と「美味しいご飯」。
ほんのり温かくさせてくれる要素が加わっている。
宙が幼稚園の頃から始まり、やがて進路を決める頃までが描かれる。
幼稚園の彼女から見る「家族」と小学校高学年から見る「母親」、
中学生から見る「母親」や家族、高校生から見る家族は徐々に変わっていく。
家族の形も変わっていけば、少女の目線も変わっていく。
幼い頃に受け入れられなかったもの、わからなかったものも
成長とともに理解していく。
思春期に理解できないことが、過ぎれば納得できることもある。
外側が変わることもあり、中身が変わることもある。
時間とともに、少女だけが変化するのではなく、環境も周りも変化していく。
理解できなかった母親・花野もまた変わっていく。
年をとって彼女も成長する。
理想の母親に見えていた叔母も、宙が大きくなり初めて見える彼女の傷がある。
そして、彼女たちの人生を彩る美味しいご飯たち。
それを宙に教えてくれたのは、花野の友人である「やっちゃん」。
やっちゃんの存在もまた、宙に「家族のカタチ」を教えてくれた大切な存在である。
辛い時、悲しい時、胸がはち切れそうな時、涙が止まらない時、
どんな時も温かいご飯がほんの少し、癒してくれる。
町田さんの作品に出てくる、辛い乗り越えることが困難な経験のある人々の物語に
優しい時間を与えてくれる「美味しいご飯」。
これまでとは少し、変わった色を見せてくれたように思う。
hontoなら紙でも電子でもお好みで町田そのこ/そのほかオススメ作品
私が一番好きなのはやっぱりこれ。
こちらも良かった。
認知症、そして疑似家族。
認知症の捉え方をこう捉えるのか〜という驚き。