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【読書記録】星を掬う/町田そのこ〜若年性認知症と母と娘と家族の話

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【読書記録】星を掬う/町田そのこ〜若年性認知症と母と娘と家族の話

「星を掬う」町田そのこ

町田そのこ「星を掬う」概要・あらすじ

タイトル星を掬う
作者町田そのこ
出版社中央公論新社
ページ数全327ページ
装画金子幸代
装丁田中久子
「星を掬う」概要
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「星を掬う」あらすじ

主人公・千鶴は、生活が逼迫していた。

元夫から暴力を受け、お金を無心され続けていた。

そんな中ラジオで耳にした「あなたの思い出を買います」という募集告知に、

賞金目当てで、自分の幼い頃の母との思い出を応募する。

大切に大切にしてきた母との夏休みの旅の思い出

母とはそれ以来、会っていなかった。

が、そのラジオへの投稿がきっかけとなり、途切れていた母との糸が繋がる。

千鶴の元へやってきた美しい女性・恵真。

再会した母とは記憶の中と母とは別人のようになっていて、しかも若年性の認知症を患っていた。

母・恵真、そして彩子という40代の女性との共同生活が始まる。

https://www.chuko.co.jp/special/hoshiwosukuu/

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「星を掬う」感想〜傷ついた女性たちの共同生活と母娘の物語

母と娘

自分らしく」生きようとした母。

母と娘のすれ違いはいつの世も起こる。

一体どこからやり直せば、彼女たちは幸せな母と娘でいられたのか。

主人公・千鶴は、自分の不幸を全て「母親に捨てられたせい」にしている。

元夫から逃れられず、金銭を巻き上げられ続け、暴力を振るわれる。

そこから逃げてきたものの、前に進むことができずに

全部母親のせいにする。

そんな母親は若年生認知症を患っており、意識のはっきりしている時と

そうでない時がある。憤りをぶつけようにもぶつけることができない。

もうすぐ30になる千鶴が、全部全部母親のせいにして不幸から逃れられずにいる姿は

見ていて気持ちのいいものではない。

けれど、負のスパイラルから逃れられずにいる彼女の気持ちもわかりすぎるほどに

丁寧に描写されていて、わかる。

そんな彼女たちの共同生活に現れた彩子の娘・美保の姿を通して、

千鶴が少しずつ自分を見つめ直し、成長していく。

進行する母の病気に対して、行き場をなくしていく自分自身の想い。

が、結局は自分自身で気がついていくしかないのかもしれない。

母から重ねて、謝罪の言葉や説明の言葉を与えられたとしても、結局は

自分自身の受け取り方や心の持ちようで、いかようにもなってしまう。

そんな彼女たちの成長と気づきの物語が描かれている。

認知症という病の描き方

そして、これは認知症や介護との向き合い方の物語でもあると思う。

「これはあなたたちを気遣ってのことではありません。

私の人生は最後まで私のものであり、私の意志によって始末するのです。」

母・聖子が認知症がひどくなる前に残しておいた手紙の一部である。

聖子は一人暮らしのご老人を対象にした家政婦をやってきた。

看取りも何度も経験し、彼女の人生と合わせて彼女なりに考えてきたことがあったのだろう。

自分らしく」生きることを望んだ聖子。

そのために、娘・千鶴と離れて暮らすことを選んだ彼女。

「自分らしく」生きることを捨てることのできない聖子は「身勝手」でもあり、

しかし意志がとてつもなく強い女性なのである。

「私の人生は、最後まで私が支配するの。誰にも縛らせたりしない」

恐ろしく「わがまま」なようでいて、自分自身が幸せになるために最も大切なことであると言える。

誰かに怯えるな。

誰かに支配されるな。

それは娘たちに向けた大切なメッセージでもある。

少しずつ進んでいく認知症の中で、それでも娘・千鶴と向き合わなければいけないともがく聖子。

「答えたいものは、ここに、あるのよ」

母が自分の頭を叩く。「ここにちゃんとあるの」(中略)

ここに、記憶の海があるの。思い出したいものはただ掬いあげればいいって、

わかってるの。でも、掬えないの。

掬い方が、分からないの。

それは認知症という病気を垣間見るような描写だった。

認知症というのは、記憶や感情を自身の奥底にある海に沈める病気だ。本人さえも、その水面は簡単に

掬えなくなる。

「星を掬う」というタイトルがここに生きてくる。

悲しみや苦しみ、そんなものは何もかも手放して、忘れてしまって構わない。きらきらした星だけを広げ、

星空を眺めるように幸福に浸っていてほしい。

時々、ふっと記憶の海から星を掬い上げる。

そんな母の元にそっと寄り添っていくのだろう。

認知症との向き合い方、介護との向き合い方に関しても

勉強になる本だった。

そんなふうに優しく、誰かと向き合えたらいいなと思う。

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