タイトル | 光のとこにいてね |
作者 | 一穂ミチ |
出版社 | 文藝春秋 |
装幀 | 大久保明子 |
オブジェ | マツバラリエ |
撮影 | 深野未希 |
本文イラスト | 上楽藍 |
ページ数 | 全462ページ |
小学2年生の結珠と果遠は、ある日、団地で出会った。
私立の学校に通い、毎日習い事に通い、母親に従順な結珠と、
自然派信仰の強い「変わった」母親に育てられる「変わった」子どもの果遠。
二人は正反対のようでいて、どこか強く惹かれ、時間を過ごし、
ある日突然、離れた。
自分で選び取ることのできない小学2年生と、それから少し窮屈な高校生、そして
自由なようでいて不自由な三十手前。
二人は出会い、別れ、惹かれ、妬み、慈しみ、それを繰り返す…。
一穂ミチ「光のとこにいてね」〜感想〜二人の関係に名前なんて必要ない
この物語は、少女が出会い、互いに惹かれ合い、
時を経て出会いと別れを繰り返しながら、成長していく
過程を描いている。
言うならば、それだけの物語なのだが、
どうしても目が離せず、本から手が離せなかった。
二人の人生も、二人の関係も、全く新しいか、といえば
そうでもないと思う。
けれど、私はこの二人の関係をなんと表せばいいのかわからない。
時には結婚相手よりも強く求め合い、他者を寄せ付けず、家族よりも深く
理解し合う二人。
友情?愛情?二人だけで生きていくの?どう呼べばいいかわからないけれど、
別に名前なんて要らない。
この二人をいつまでもみてみたいと、そう願う。
一穂ミチさんについて
一穂ミチさん。「スモールワールズ」から二作目だが、
「スモールワールズ」はその表紙から想像する物語とは違って
不意に現れた毒に「へ?」とびっくりした。
今度は「毒が潜んでいるかもしれない」と思いながら
読んでみた。
そこには「毒」はなくて、「光」があった。
そこかしこに「闇」を感じさせる物語進行だけれど、
「闇」を暴くよりも、そこに表れた「光」に目がいく物語進行だった。
二人がそれぞれに抱えている人生の「闇」は解決するようでいて、
解決しない。不意に表れて、不意に消えていく人生の「闇」。
けれど、互いはその人生の中の一筋の「光」である。
本当はたくさん「光」はあるけれど、人生で一番初めに出会い、
互いに「光」となり、その「光」を求めて生きていくことで、
拠り所として生きていく。
そんな二人のようになりたいと思うし、
もしかしたら誰にでも一人は存在するのかもしれないと思うし、
いや、そんな人はなかなか出会えない、とも思う。
だからこそ、ずっと読んでいたいような
そんな気持ちにさせられるのだ。
まっすぐな、小学2年生の果遠が口にする「光のとこにいてね」
結珠のそばにいたい一心の高校生の果遠が口にする「光のとこにいてね」
結珠の幸せを願う果遠が想う「光のとこにいてね」
優しく、誰かを想いながら、私も口にしたい「光のとこにいてね」と。
hontoなら電子でも紙でもお好みで 物語の舞台となる「本州最南端の地」和歌山県串本