辻村深月/「琥珀の夏」あらすじ・概要
タイトル | 琥珀の夏 |
作者 | 辻村深月 |
出版 | 文春文庫 |
ページ数 | 616ページ(解説含む) |
装画 | はるな檸檬 |
デザイン | 大久保明子 |
ジャンル | ミステリー |
「理想の教育」を掲げて活動する団体の元・施設から白骨遺体が見つかった。
「その白骨遺体は私が知っている”あの子”かもしれない…」
たくさんの問い合わせ。
弁護士である近藤法子も依頼を受けて、団体へと足を運ぶ。
彼女自身も少女時代にその団体の夏合宿に参加した経験があり、
「もしかして、私の知っているミカちゃんかもしれない…」と思いながら。
少女たちの思い出と、無邪気な少女たちの罪、そして大人の罪、が暴かれていく。
辻村深月「琥珀の夏」感想〜少女たち目線の描き方について
辻村深月さんは少女たちの残酷さやそれに怯える少女の気持ちを描くのが上手いなあと思う。
学校などの集団の中で、そこしか知らない少女たちは時にものすごく残酷になり、
大人になればそれが大したことではないと知ってもその時は、過度に怯えて逃げ場をなくす。
そうした気持ちを誰もが知っているし、きっと一度は経験しているであろうけれど、
大人になるにつれ、私たちは鈍感になっていく。
その痛みを乗り越えて、いつしか鈍感(強く)なっていく。
そして、その怯えていた気持ちをいつしか忘れてしまう。
辻村さんの作品を読んでいると、その気持ちをまざまざと思い出す。
あの頃の「学校」という集団の中で、上手に振る舞えなくて、振る舞えない気がして
怯えていた気持ち。
怯えていた相手も、きっと別の何かに怯えているとは知らず。
互いに怯えあって生きていたあの頃。
そこ以外に居場所がないと怯えていたあの頃。
「ミライの学校」というある種、宗教団体の話ともとれ、そこで生活する子どもたちは自分でそこを選んだのではなく、
親が「ミライの学校」の教義に共鳴し、子どもたちを預けたわけであり、それは宗教2世の話とも取れる内容であった。
そこで育った子どもたちの行き場のなさ。
外の世界を知らずに育った子どもたちの未来。
その話の中で描かれる少女たちのやり取り。
そして、大人になった辻村さんだからこそ描くことのできる、「少女」たちの「大人」の姿。
少女たちは忘れていたはずのあの頃を思い出し、あの頃の気持ちも思い出す。
大人になる過程で忘れていた、あの頃の気持ち。
ああ、すごいな、と思う。
辻村深月さんそのほかおすすめ作品
本屋大賞を受賞した作品。子どもが読んでも面白く、世界観も作り込まれていて、
きっと誰かの救いとなる。
映画化もされている。
辻村深月さんのデビュー作なんだが、私は結構好きだ。
「ミステリー」という感じのする作り込まれ方で、二転三転する展開や、学園ものというところも
好きなポイント。出てくるキャラクターも結構好き。
こちらも映画化されていて有名どころだが、好きな作品。
連作短編というのか…。
「琥珀の夏」hontoなら電子でも紙でもお好みで選べる