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直木賞受賞作「黒牢城」/米澤穂信
「黒牢城」作品概要
タイトル | 黒牢城 |
作者 | 米澤穂信 |
出版社 | 角川書店 |
装丁/写真 | 岩郷重力+wonder workz |
ページ数 | 443ページ |
ジャンル | 歴史・ミステリー |
あらすじ
ときは戦国、「本能寺の変」の起こる4年前。
織田信長の破竹の勢いの中、織田の家臣であり、有岡城城主・荒木村重が突如、謀反を起こし、
有岡城に籠城する。
そこへ、織田側の使者として送られた黒田官兵衛。
翻意を促すも、逆に捉えられて地下牢に閉じ込められる。
「籠城」という、密閉された空間、時間の中で
徐々に疲弊していく人々。
その中で起こる奇怪な事件。
「籠城」を成し遂げるために、城主・荒木村重はなんとしてもそれらの事件を
解決させなければならない…。
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感想
どこか薄暗い空気感漂う米澤穂信作品
米澤穂信さんのミステリーは、
どこか、いつもグレーな空気が漂っている。
それは作品に漂う空気感や、目に浮かぶ色合いで、
重苦しいというほどではないが、いつもどこか、なんとなく薄暗い。
「満願」然り、「王とサーカス」然り。
これもまた、どこか薄暗い空気が漂い、それは、
不気味、不穏な空気と言い換えることもできる。
その空気を吸い続けていたら、なんだか気分が悪くなってしまいそうな、空気感だ。
歴史上有名な黒田官兵衛も、この作品の中では不気味さが際立つ存在として、
そこに在る。
この空気感も、たまに味わうのはなんとも小気味がいい。(いつもはちょっと遠慮しておきたい)
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一味違ったミステリー
ミステリーは全部読んでいます!と言えないので、自信はないが
米澤穂信さんのミステリはどこか毛色が違うように思う。
「ほう、こういう題材がミステリーになるのか」という感想だ。
読んでいる最中に夢中になって読み進めるというのもなく、
じわりじわりと効いてくるのだ。
思い返せば、一つ一つのシーンが頭に焼き付いている。
あれ、細かいところはどうだったんだっけ?ということはあるのだが、(年のせいか?)
その不気味な空気感と共に、奇妙な読後感があり、
余韻が後をひく。
ドラマで観たかのように、頭に浮かんだ映像が焼き付いている。
今回も「戦国」「籠城」「謀反」といったキーワードをもとに繰り広げられる人間心理のミステリー
といったところだろうか。
籠城している、外と隔たれた空間の中で奇怪な事件が起きれば、
この「籠城」が失敗に終わる、という状況の中でミステリーを解決していく。
始めは黒田官兵衛を捉えて一体この後、ミステリーとしてどう展開するのか?
のっけから人が奇怪な死に方をして、解決され、まだ事件起こるの?どう展開するのよ?と
いった状態の中、追い込まれていく人間の心情が一緒に描かれていく。
なるほど、そこも一緒に面白がるのか、と。
個人的な感想で言うと、「満願」「王とサーカス」の方が面白かったのだが、
「戦国」好きも楽しませるとも言えるかもしれない。