第170回直木賞の「ともぐい」。
「熊文学」とあるが、「熊文学」って一体何…?と思いながら読み進める。
元羊飼いという異色の経歴も気になる。
「ともぐい」とはどんな話なのか?
あらすじと感想を綴ります。
河﨑秋子「ともぐい」概要&あらすじ
タイトル | 「ともぐい」 |
著者 | 河﨑 |
出版社 | |
出版 | |
装幀 | 新潮社装幀室 |
装画 | 丹野杏香 |
ページ数 | 295ページ |
明治の後期。急速に町並みが変わり始める北海道。
熊爪は、食べる分だけを獲り、必要な分だけを狩り、
たった一人で山奥で暮らしていた。
それは「猟師」とも異なっていた。誰とも交流することなく、
時々、必要なものを得るために町に降りるだけ。
鹿を追い、熊の生態を熟知し、必要な時だけ対峙する。
ずっとそうしていくつもりだった。ところが、ある日、彼の前に、向こうの山から
「穴持たず」(冬眠せずに冬越えした熊)を負い負傷した、身勝手な男が現れた。
河﨑秋子 プロフィール
帯に「新たな熊文学」とあるので、「熊文学」って何?と思って調べてみたら、
河﨑秋子さんは元・羊飼いと知る。
「元・羊飼い」って何?と思ったら、ニュージーランドで「羊飼い」を
1年ほどされていたそうだ。
河﨑秋子(かわさきあきこ)
1979年北海道別海町生まれ。2012年「東陬遺事」で第46回
北海道新聞文学賞(創作・評論部門)受賞。
14年「颶風の王」で三浦綾子文学賞、同作でJ R A賞馬事文化賞、
19年「肉弾」で第21回大藪春彦賞、20年「土に贖う」で第39回
新田次郎賞を受賞。他書に「鳩護」「締め殺しの樹」(直木賞候補作)
「鯨の岬」「清浄島」などがある。
(本書より)
元々、お家は酪農家であるらしい。
そうした経験をもとに、北海道を舞台にした小説を書かれている様子。
河﨑秋子「ともぐい」感想
「熊文学」って何だろう〜と思いながら、読み始めたが、
これが何のジャンルに当たるのか、はっきりとわからない。
わからないままに、どんどんのめり込んでいく不思議さがあった。
熊と死闘を繰り広げる…だけではない。
猟師としての生き様…でもない。
熊爪は現に「自分は何者であるか」と自分に問うている。
人と交わらずに生きてきて、交流するたびに「わからない」「面倒」と
言ってきた。
彼の視点も面白く、不思議でありながら、
彼からどこか新しい考えや捉え方を学んでいくふうでもある。
明治の後期、日露戦争前の変化のある時代に、北海道で起きたこと。
それだけでもないように思う。
変わっていく自然や世界。
人間の生き様。
誰に共感するでもなく、それでも引き込まれて読み進めていく面白さ。
そして、これまでに読んだことのない物語で、どう展開するのか全く読めないという新鮮さ。
新しい世界に出会った気がする。
「ともぐい」の購入はこちら