「ベストエッセイ2021」読んで改めて感じる、エッセイの魅力
エッセイが好きだ。
でも、昔(10代の頃)はエッセイが嫌いだった。
小説は好きでも、それを書いた人のエッセイなど読む気にならなかった。
小説に興味はあっても、それを書いた本人には興味ないワ、と思っていた。
けれども、年をとるにつれて、エッセイの魅力が理解できるようになった。
誰かの日常は私の日常にもなりうるし、
誰かの気づきは私に、私にも気づきを与えてくれる。
私が言葉にできない何かを言葉にして教えてくれる。
私が気がつかない何かを教えてくれる。
私の知らない誰かの日常を教えてくれる。
そんなに素晴らしいことってない。
私は私の人生しか生きられないけれど、その言葉は私の心のどこかに
息づいてくれる。
何かの拍子に私の中の感覚として蘇ってくれる。
小説で、誰かの人生をそのまま生きるのも楽しいけれど、
なんでもないようなささやかな日常を言葉にして私の中に
根付かせてくれるエッセイも、すごく私にとっては重要な存在なのだ。
ベストエッセイ2021の魅力
毎年買うわけではない。
何年か前に図書館で購入しただけだ。
でも来年からは毎年購入してもいいかもしれない、と思った。
「ベストエッセイ」は光村図書から毎年出版されている。
その年の各所に掲載されたさまざまな人のエッセイが
選出されている。
作家、著名人、冒険家、大学教授、詩人、評論家、
多種多様な職業の人が名前を連ねている。
普段手に取らない人の文章、そして価値観、生活を知ることができて
それが楽しいのが一点。
そして、昨年さまざまな生活スタイルが変えさせられたことを
いろんな人が文章にしている。
そこに「記録」がある。
私が感じたことも、私が感じなかったことも。
そこにいろんな人々の「記録」がある。
その年の出来事を色濃く、切り取っている。
あらゆる立場の人が、いろんな観点からあの年あったことを、
どんな一年だったか、
どんなことを感じたか、
大切なこと、
忘れたくないこと、
忘れられないこと、
自分が経験したことも、していないことも
そこにたくさん綴られている。
あのとき感じたもやっとしたことは、こういうことだったんだ、という気づきもある。
何年か経って、あの頃を思い出すとき。
これを読めばまざまざと思い出されるだろう。
大きく変わった暮らしのなかで、
編纂委員・三浦しをんさん帯の言葉より
それでも私たちは喜びや悲しみや笑いを
胸に抱いて生きている。
変わったことと変わらないことを、
真空パックみたいに
新鮮なまま詰めた一冊になりました。
今、世界で起きていること。
まずこの年始めについては、ベストエッセイ2022にはこれが書かれるに違いない。
どうか悲しい事ばかりで埋まらないように。
ベストエッセイ2022の締めくくりには
希望に満ちた文章も載っていますように。