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【読書記録】恩田陸「spring」感想 バレエ・芸術を文章で味わう

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【読書記録】恩田陸「spring」感想 バレエ・芸術を文章で味わう

本屋大賞2025にノミネートされながら、

惜しくも6位作品となった恩田陸さんの「spring」ですが、恩田陸さんのキャラクター造形の素晴らしさを実感し、

ストーリー運び共に、良作と言える今作。

「spring」感想

恩田陸「spring」あらすじ 出版社 概要

萬(よろず)春(はる)。

バレエのワークショップで自身の名前を「ten thousand spring」と紹介し、みんなは彼を「HAL」と呼ぶ。

才能ある若者が集う中で、個を激しく主張しないのに、目が離せなくなる存在。

やがて、彼は誰もが一目おくダンサーであり振付家となる。

その彼を、同じく日本人ダンサーである深津純、そして叔父の志田稔、作曲家の滝澤の目を通して語られていく。

最後には彼自身の目線で語られ、それはあたかも答え合わせのよう。

タイトルspring
作者恩田陸
出版社筑摩書房
ページ数全437ページ(単行本);初版限定特典は別
ブックデザイン鈴木成一デザイン室

恩田陸「spring」感想〜バレエを観たくなる

恩田陸が語る「天才」

私はバレエに詳しくない。

習ったこともなければ、みたこともない。

バレエに出会わずに生きてきた。

こどもの頃、「ピアノかバレエか」と言われ「ピアノ」を選んだ私。

見学に行った記憶はないから、なんとなくで選んだのではないかと思う。

「spring」で語られる、バレエに一生を捧げるために生まれてきた人物、

萬(よろず)春(はる)は、バレエとは無縁の環境にいながらも、必然性を持ってバレエと出会う。

その様子はドラマチックであり、そして彼の天才性を窺わせるエピソードになっている。

恩田陸さんの綴る物語は、時々難解なものもあって、何度か途中でリタイアしたり、

作品がたくさんあって読みきれていないから一概には言えないけれど、

「spring」はすごく読みやすい。何より出てくるキャラクターがすごく魅力的なのだ。

天才を語らせたら、それこそ天才なのでは、と思う。

人公、萬(よろず)春(はる)が一体、どんな人物で、人々にはどんなふうに見えていて、

どのような幼少期を過ごし、どうやってHALが作られていったか。

ある時は、彼に近い友人が語り、ある時は叔父が語り、ある時は戦友が語る。

そして最後には彼自身が語る…

天才本人の目線に映った時、それはやはり天才そのものであり、意外と普通でもあったりする。

ああ、恩田陸さん、やっぱり上手いなあと思う。

 

垣間見る「バレエ」の世界

最初に書いた通り、バレエには詳しくないし、みたこともないけれど、

この本を1冊胸に抱えて、舞台をみにいくのも悪くないかもしれない、と思う。

「蜜蜂と遠雷」を読んだ時は、知らない曲はダウンロードしたくなったし、

知ってる曲は聴きながら読みたくなった。

この「spring」もバレエを見たことがない私でも、目の前にその舞台が浮かび上がってくるようであり、

そしてこんな舞台を見てみたい、と思わせる。

踊りも知らないけれど、その踊りを息を呑んで見てみたいと思う。

芸術はそれだけで完結し、みていることが全てでもあるけれど、それをこうして文章に表すこと、

表されることで、舞台を知らないものに、その奥深さを芯に伝えてくれる。

「何かわからないけれどすごいの!」ということを、言葉にして、文章にして、きちんと

胸に落としてくれる。

言葉って、言語ってやっぱり大切なのだなと改めて思う。

 

 

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