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【読書記録】「よって件のごとし」/宮部みゆき〜3つの短編〜あらすじ・感想

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【読書記録】「よって件のごとし」/宮部みゆき〜3つの短編〜あらすじ・感想

よって件のごとし

「よって件のごとし」三島屋シリーズ⑧あらすじ・感想

タイトルよって件のごとし/三島屋変調百物語八之続
作者宮部みゆき
出版社角川書店
ページ数523ページ
定価2,090円
出版年2022年7月
よって件のごとし概要

「よって件のごとし」あらすじ

三島屋シリーズ第八段。

神田三島町の袋物屋・三島屋にて行われる「変わり百物語」。

語り手一人に聞き手一人、ここで聞いた話は決して外に漏らさず
「語り捨て、聞き捨て」がお決まり。

おちかから聞き手二代目となった富次郎のシリーズとしては三作目。

「賽子と虻」「土鍋女房」「よって件のごとし」の中編三作。

先代聞き手のおちかは、瓢箪古堂に嫁いで、身重になっている。

まだ身の振り方の決まらない、富次郎がなんだかヤキモキしながら
聞き手を務めている・・・。

感想〜宮部みゆきの時代ものの魅力・そして変調物語の魅力

宮部みゆきの時代ものが好きだ。

中でも、この三島屋シリーズが好きである。

黒白の間という閉ざされた空間の中、
語り手一人、聞き手一人でありながら、そこで広げられる物語によって
過去にも広がり、日本中へも空間は広がる。

そして、江戸の袋物屋というご商売。
江戸の風流が季節ごとに味わえて、とても贅沢なのだ。
江戸時代という時代がいかに、豊かで、人情味に溢れ、風情もあり、
風流で、文化が彩りのあるものだったか、
その魅力が存分に味わえるのだ。

さて、今回の三島屋シリーズは三つの中編から成る。

①「賽子と虻」

不思議な神様たちのお話。
ある村で崇められる神様のお話。
不気味で気持ち悪いところもあるけれど、
どこか愉快で可愛げのあるところもある「神様」たちの様子。

神様は絶対的な力を持っている、ようでありながら、
人間の信仰によって成り立つ、というどこか不条理で、
儚い存在であることも描かれる。

人間のちっぽけさと、神様の脆さが表裏一体であること。

なんだか不思議で興味深い話だった。

賽子と虻

②「土鍋女房」

これまた神様の話。

川に住み着く神様に見そめられた「兄サ」を心配する妹の話。

色恋沙汰かな〜と思ったらそこまでは描かれておらず。

あくまで妹目線。

③「よって件のごとし」

まさかのゾンビ展開!!!

宮部節でゾンビが読めるとは!宮部ファン、静かに興奮。(私だけ?)

しかもパラレルワールド展開。

現代ゾンビとは違う、武器も弓矢、鉈、素手。鉄砲など出てこない。
農民vsゾンビ(「ひとでなし」と呼ばれる)。

江戸時代の魑魅魍魎の世界には、別段詳しい説明なんて要らない。
なぜ、それらが存在するか?

そんなもの考えたってわからない。

そこにあるのは闇ばかりだから。
きっと昔は「不思議」は「不思議」。
あくまでも「不思議」なことは最後まで不思議だったはず。

三島屋に語られる「不思議なこと」の面白さ

聞き手である富次郎は、今で言うと「ニート」?と言ったところだろうか。

この先、将来が未だ決まらず、自分でもどうしようかと考えながら
親元で生活している。
迷いながらも、素直なところが彼の良きところ。

そんな彼が、まだ未熟ながらも聞き手を務めることで、
世の不思議、普通では出会えないような、摩訶不思議な出来事、

やりきれないこと、納得し難いこと、飲み込み難いこと、
「苦難」と一言で言うには耐え難いようなことを聞き、
世間というものを知る。

実際、経験した人とは比べ物にならないが、それでも
そこから、彼は一つひとつ学んで、成長していく様がいい。

それは、わたしたちが本を読む、ということにも似ているのかもしれない。

実際には経験できないようなことを、黒白の間という閉ざされた空間で聞き、
あたかも自分で体験したかのような気持ちになりながら
自分の中にそれらを取り込んでいくこと。

この百物語の良きところは、それかもしれない。

さて、百物語の合間に進行する三島屋の人々の物語もまた好きなところである。
三島屋には長男・伊一郎が戻ってくることとなった。

しばらくお休みすることになった百物語。

次の展開が楽しみである。

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