町田そのこ「ぎょらん」概要・あらすじ
タイトル | ぎょらん |
作者 | 町田そのこ |
出版社 | 新潮社 |
ページ数 | 全517ページ(文庫版・解説含む) |
カバー装画 | 三上唯 |
人が死ぬ際に残す珠「ぎょらん」。噛み潰せば、死者の最期の願いが
わかるのだという。地方都市の葬儀会社に勤める元引きこもり青年・朱鷺は、ある理由から
都市伝説めいたこの珠の真相を調べ続けていた。「ぎょらん」をきっかけに交わり始める
様々な生。死者への後悔を抱えた彼らに珠は何を告げるのか。
(本書あらすじより抜粋)
7つの連作短編から成る。
文庫版には書き下ろし「垢はこれからも」も収録。
町田そのこ「ぎょらん」感想
都市伝説めいていて、謎は解けるようで解けない、だからこそ余計に
「もしかしたら…」と思わせる存在「ぎょらん」。
誰か大切な人を亡くした後なら、そんな存在は救いになるかもしれないし、
逆に自身を傷つけるかもしれない。
その両方の可能性を含めた「ぎょらん」は余計に謎めいていて、
不思議で、気になる。
短編の中に通じて出てくる朱鷺は「ぎょらん」に苦しみ、「ぎょらん」の存在を
ずっと追い求めているキーパーソンだ。
そんな彼が葬儀会社に勤めている。
葬儀会社の進める葬儀のあり方についての記述。納得ばかりだった。
葬儀に司会って…とか、葬儀に飾り付けとか…と思っていたけれど、
故人と別れを告げる儀式は故人のためのものでなく、残されたものへの
大切な時間なのだ。
葬儀会社の人の心のこもった儀式に、残されたものたちは本当に救われる。
大切な大切な儀式なのだ。
あの慌ただしい大変な時間も、あの時間を経ることで、
大切な人を失った悲しみをどんなにか軽くしてくれることか。
経験した私は知っている。
信じられない気持ちを一つ一つ昇華していってくれるあの時間。
「ぎょらん」という存在も確かに気になる。
けれど、それ以上に葬儀会社に対するリスペクトだと、私は思っている。
あの時間を経ることの大切さ。
あの時間を与えてくれる葬儀という存在。
「ぎょらん」という存在にたとえ出会えなくとも、
あの時間を与えてくれた葬儀会社という存在を思い出して、
私はあの時の悲しみと少し軽くなった心を思い返していた。
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