ドラマ「FirstLove 初恋」あらすじ・概要
タイトル | FirstLove 初恋 |
配信 | Netflix |
話数 | 全9話 |
監督・脚本 | 寒竹ゆり |
キャスト | 佐藤健・満島ひかり・八木莉可子・木戸大聖 アオイヤマダ・夏帆・濱田岳・向井理ほか |
2018年・札幌。也英はタクシー運転手をしている。
一方で晴道は、ビルの警備員をしている。
かつて、二人は高校時代、お互いに惹かれ合い、
夢中になり、恋をしていた。
二人はどうして別れてしまったのか。
どのような20年を経て「今」にたどり着いたのか。
晴道は、ある日見かけた也英の姿を求めて、
探し始める。
かつての恋人。忘れられない人を求めて…。
FirstLove初恋/キャスト・登場人物
野口也英(満島ひかり)
札幌市内でタクシーの運転手をしている。
中学生の息子がいる。
野口也英(八木莉可子)/高校時代
学校中の男子から憧れているマドンナ的存在。
晴道に密かに惹かれている。
並木晴道(佐藤健)
札幌市内のビルで警備員をしている。
ある日、ビル内で踊る詩と、彼女をこっそりと見ている綴に出会う。
並木晴道(木戸大聖)/高校時代
ちょっと不良っぽくヤンチャな高校生。
也英のことが好き。
向坂綴(荒木飛羽)
也英と別れた夫との子ども。
父親からは医者になるように言われているが、音楽が好きで詩の踊る姿に
憧れている。
詩(アオイヤマダ)
自分を「表現者」と呼び、音楽に合わせて踊っている。
その様子をSNSにあげている。
占部旺太郎(濵田岳)
也英の同僚。也英に好意を抱いている。
向坂行人(向井理)
也英の元夫。医者。合理主義者。
First Love初恋/見どころ・感想
以下、ネタバレには気をつけていますが、ネタバレの可能性を含みます。未視聴の方はご注意ください。
1999年、宇多田ヒカルの「FirstLove」。それを聴きながら相手を想った恋。
二人で一つのイヤホンを分け合って、聴いた「First Love」
それを聴くと思い出してしまう初恋の人。
今も、色褪せずに胸の中で輝いている初恋。
ずっと忘れられずにいる、大切な人。
真っ直ぐに想い、その人の幸せだけを祈っている。
晴道は、現在の恋人(恒美)と結婚の予定だが、
今も初恋の人を忘れられずに、執着している。
その様子は同僚に呆れられるほどで、「固執」している
と言っても過言ではない。
ところが也英の方は、結婚して離婚した身。
同時に、二人の高校時代の爽やかで真っ直ぐで純真な様子が描かれていくものだから、
余計に二人の間に一体何があったのだろう、と考える。
二人の間に「何か」があって、それが二人を引き裂き、
別々の道を選んだのだ、とそれは想像がつく。
一体、何があったのだろう。
どうして、こんなに真っ直ぐに向き合い、
お互いを大切にし、
お互いが大好きでいたのに、
でも、初恋ってそんなもんだよ、と大人は考える。
所詮はこどもの初恋。子どもの恋。
大人の方がわかってるよ、と。
苦労も知ってる。自分がたくさん苦労をしてきたんだから、
子供には同じ苦労はさせたくない。
「恋」なんていつかは忘れるもの。
だから…
小泉今日子扮する幾波子が取った行動は、だから理解できる。
一体何をしているんだ、この人は、と思ったが、
大人からすれば「所詮、初恋」。
見ている大人はみんな初め、思ったに違いないのだ。
「ああ、私にもこんな青春あったよ」
「でも、別れちゃうんでしょ」
「だって、私も別れたもん」
私も思った。どんなに好きでもどんなに恋をしていても
やがて気持ちは変わって、今は違う人と家庭を築いている。
だって、それが「初恋」でしょ、って。
そう思ったあなたの心にこそ、このドラマは届けばいいのかもしれない。
所詮、初恋でしょ、って思ったあなたに。
なぜ、二人が離れたのか、それを知った時に、
そして、その後の二人がどうなっていくか
ここに出てきた人々がどうなっていくかを見たときに
「初恋」の意味が変わる気がする。
魅力的なキャラクター(登場人物たち)
①並木晴道(木戸大聖/佐藤健)
晴道は真っ直ぐだ。
木戸大聖くんが演じる高校生の晴道。
ヤンチャで、笑顔が眩しくて、そして、也英を一途に思っている。
どれくらいに也英を思っているかは、
ドラマを見ていくごとに明かされる。
彼の人生は、丸ごと也英なのだ。
そんなことってあるのだろうか。
佐藤健が演じる晴道は、やはり年数を経て大人になった晴道だ。
いろんなしがらみが彼を苦しめる。
それも全部彼が歩いてきた道だから。
でも、彼はどこまでも晴道で、だから大人になってから、
也英と再会した時に晴道が取った行動の一つ一つが全部
晴道なのだ。
始め不可解に思えるその行動の全てはやがて少しずつ
納得いくものに変えられる。
一つずつ丁寧に、人生が描かれていく。
②占部旺太郎(濵田岳)
私の最大のお気に入りキャラクター。旺太郎。
大雨の中でずぶ濡れになりながら、自分の不運を呪う旺太郎。
人読んで(私読んで)ずぶ濡れ濱田岳。
可愛いったらありゃしない。
一生懸命に也英に話すその姿。
きっと彼は自分の今までの人生を、不運さをきっと呪いながら生きてきた人だ。
大学はいいところを出て、でも就職に失敗して、
本当はタクシーの運転手になりたくなかったと思っていたかもしれない。
でも也英に出会い、也英に恋をして、
きっと彼は初めて「タクシーの運転手になってよかった!」と思うようになった。
自分を「最高に運がいい」と思ったのではないだろうか。
そんな彼の気持ちが溢れ出ている。
彼の、必殺!「ひざまづき」告白も最高だった。
今どきそんな告白ある?と思う。それを濱田岳の背の低い(失礼)人がするのが
また最高に可愛いのだ。
「運命なんてない」という也英に対して、旺太郎が、「運命はあると思う」と論じる。
「自分がもし、これからエビの養殖を研究して成功したら、也英さんと
出会ったおかげです」という。
「そんな予定はないけど」と。
そうして、彼女の背中を押すのだ。
報われない恋だったけれど、彼の存在もまた、
也英の人生にとって大切なピースの一つなのだ。
③詩ちゃん(アオイヤマダ)
初めて見た時は強烈だった。
綴が恋をする相手がどうしてこの子なんだろうって思った。
かなり個性的で、独特な存在感。
晴道が也英に恋をするのとは違うのでは…と思った。
けれども彼女の魅力は顔の造詣とかそんなことじゃない。
アオイヤマダさん。私は知らなかったが、米津玄師のミュージックビデオや
オリンピック閉会式にも出ていたりとかなり有名な人らしい。
そう、彼女、すごい人だったのだ。
彼女の演技は確かにぎこちない。不自然さが否めない。
けれど、彼女の言葉にはきちんと重みがある。
彼女が言う。
「その動かないはずのものに力を加えるのが夢だったり好奇心だったり
愛する人の存在だったりするんじゃないのかな」
也英の背中を押す、その言葉はしっかりと観ている人の心にも届く重みがある。
大人にこそ観てほしい「初恋」の物語
ここで語られる「初恋」はただの恋愛の物語でないように思う。
もちろん大切な「初恋」の話で、あわく切ない「初恋」の話だ。
木戸大聖演じる晴道と、八木莉可子演じる也英の様子はキラキラしていて、
あの頃誰もが夢と希望に溢れていた様子を思い浮かべさせる。
それに対比するように、「夢なんてない」「今はただの結果です」と言う言葉を繰り返す
現在の也英が、やがて恋をして、自分の人生を取り戻す様子にこそ
このドラマの意味があるように私は思う。
30代、離婚してただただ仕事をこなす日々。
でも、失ったピースを取り戻した時に、彼女は自分の夢も人生も取り戻すのだ。
え、そんなことできないよね。今更無理でしょと思った。
でも、ラストではこんなあり方もあるのか、と考えさせられる。
彼女がたとえ夢を取り戻さなくても、物語はハッピーエンドだったはずだ。
けれど、夢を取り戻した姿こそ、大人たちに今一度問いかける。
あなたの夢は何ですか?と。
そして、也英が息子・綴に言う言葉。
「あなたには自分で選び取ったものを信じる権利がある」
この言葉を、すべての子を持つ親は肝に命じなければいけない、と思った。
少なくとも私は肝に銘じよう、と思った。
子どもが選び取ったものを、こども自身が信じる権利があるのだ、と。
子どもがもった夢を否定すること。
それは、誰もがとおった初恋の道を貶すことと同じだ。
そして、その初恋を貫き通した二人が見せてくれたものは、
自分が信じる道、選んだ夢を突き進むことの素晴らしさだ。
今からでも遅くない、とこのドラマは教えてくれる。
これは、ただの恋のドラマじゃない。
私にはそう、教えてくれた人生のドラマだ。
最後に
このドラマには綺麗な雪景色の街並みがたくさん出てくる。
北海道が舞台。これが東京なら再び出会うのはむずかしかろう、とも思うのだが
札幌。都会といえども、見つけたタクシーの運転手をしらみつぶしに探したり、と言うのも
札幌だからこそできたことかもしれない。
二人が再び出会う札幌の街並み。行ってみたい。 「道中で退屈しないための本とポケットに少しのお金があれば」