Uncategorized 読書

【読書記録】タイムマシンに乗れないぼくたち/寺地はるな

※当ブログでは商品・サービスのリンク先にプロモーションを含みます。ご了承ください。

  1. HOME >
  2. Uncategorized >

【読書記録】タイムマシンに乗れないぼくたち/寺地はるな

タイムマシンに乗れないぼくたち

「タイムマシンに乗れないぼくたち」あらすじ・概要

タイトルタイムマシンに乗れないぼくたち
作者寺地はるな
出版社文藝春秋
出版年2022年
ジャンル短編集・ヒューマン
ページ数213ページ
「タイムマシンに乗れないぼくたち」

全部で7つの短編からなる。

自分を殺し屋に見立てて日々を過ごす、「コードネームは保留」や両親の離婚により転校してきて
まだ学校に馴染めない「タイムマシンに乗れないぼくたち」など。

data-ad-client="ca-pub-5822305346515603" data-ad-slot="2678472334" data-ad-format="auto" data-full-width-responsive="true">

「タイムマシンに乗れないぼくたち」感想〜やさしい言葉たち

寺地さんの作品は、優しい。

私はその「優しさ」を持ち合わせていない気がするけれど、
こんな優しさも、確かにあるのだと、いつも学ばされる。

好きな人のなにになりたいのか。それはとてもむずかしい質問だった。

でも、好きな人にどうあってほしいか、ということならばすぐに答えられる。

「好きな人に、ちょっといい枕で眠ってほしいとよく思います」

(「コードネームはまだ保留」より)

大半の人は…いや、私は、好きな人とどうなりたいかばかり考えて、
それは、つまり、「自分」がどうしたいかであって、

「好きな人がどうあってほしいか」なんて考えたことがない。

けれど、この主人公は言うのだ。

好きなものでおなかいっぱいにしてほしい。蚊に刺されにくい体質になったり、コンビニのくじで
ちょっといいものが当たったり、お店に入ったら自分の好きな音楽がかかっていたり、
そういう日々を送ってくれたらいいと思っている。

その隣にいるのがわたしではなくても。

(同上)

逆なら、いっぱいあるのに。

こんな風に思えたら、素敵。そう思った。

優しい言葉と、優しい感覚。

誰かのようでないことを理由に否定されている。たった四歳の女の子が。

いや年齢は関係ない。一度自分が思ったことを頭の中で否定した。何歳であっても、それはだめだ。

(「口笛」より)

誰かと誰かを比べること。
無意識にしてしまう、その行為こそ罪深いのだ、とハッとさせられる。

四歳の女の子も、結婚しているあの人も、結婚していない主人公も、母親も。
いろんな幸せと、いろんな不幸がある。

いろんな見えないものと戦っているかもしれない。

そして、寺地さんのユーモアな文章も好きだ。
寺地さんは大阪在住。
畳み掛けるような文章はそこからきているのだろうか。

ユーコオバサンはさっきからずっと、わたしの夫の昔の話をしている。草介が小さかった頃な、そういえばその時草介がな、
、と、なかなか終わらない。ひとつの草介エピソーぞ枝葉からまた新たな草介エピソードが芽吹き、伸びていく。

エンデもびっくりのネバーエンディング草介ストーリーである。以下草ストと呼ぼう。

(「夢の女」より)

夫を亡くしたばかりだからこそ、逆にシュールに
「冷静である」と見えるように、主人公の女性の辛辣な視点が描かれる。

その冷静さ、シュールさが最後になって、彼女の悲しみと
対比されているように思う。

私が一番好きな短編は、「深く息を吸って、」。

「きみは…」と語りかけるように進む。

いつか綴りはじめるきみ自身の物語の一行にも、憧れのかけらは潜んでいる。

大切な、いとしいきみを、そこで静かに、じっと待っている。

だからそう、今みたいに顔を上げて。

深く息を吸って、ゆっくり吐いて。

きみはきっと、だいじょうぶ。

(「深く息を吸って、」より

寺地さんの優しい言葉がたくさん、そこには、ある。

-Uncategorized, 読書
-, , , , , ,