吉田修一「永遠と横道世之介」あらすじ・概要
タイトル | 永遠と横道世之介 |
作者 | 吉田修一 |
出版社 | 毎日新聞出版 |
装幀 | 岡孝治 |
写真 | ©️BLOOM image/amanaimages |
ページ数 | 上巻;347ページ/下巻;382ページ |
時は平成。東京での生活もはや20年。
39歳になったカメラマン横道世之介が暮らすのは東京郊外の下宿。
恋人であるあけみちゃんが営む下宿に住む世之介。と言っても結婚しているわけではない。
微妙な関係。けれど、良好な関係。
それを見守るでもなく見守る下宿人の営業マン、書店員、大学生、そして引きこもりの一歩がやってきて、
さらにゆるい日常は続いていく…
吉田修一「永遠と横道世之介」を大切にしたい理由〜感想
横道世之介シリーズが好きだ。
いや、世之介が好きだ。
上京したての世之介を描いた「横道世之介」に始まり、それを最後まで読んだ人はもう、
結末を知っている。
けれど、だからこそ、そこへと続く彼の生活を細やかに知りたいし、知ることができるのは
この上なく幸せな時間だ。
「横道世之介」「続・横道世之介」に続くシリーズ3弾。
長崎から東京へ上京したばかりの世之介と周りの人々を描いた1冊目。
就職せずにのらくらと暮らしている頃を描いた2冊目。
世之介はいつの時代も、いつもどことなく頼りなさそう。
けれど、その言動はなぜか憎めず、なぜか揺るぎなく、なぜか心地いい。
その時々で、世之介のそばにいる人は、惑い、必死に生きようとしていて、
人生を迷い懸命に生きている。
そんな中で肩肘を張らずに、力を抜いて生きている世之介の言葉が
彼らの力となる。
「この世で一番カッコいいのはリラックスしてる人ですよ。」
世之介のこの言葉には妙に説得力がある。
リラックスできない時。
人生に焦りを感じる時。
どうにかこうしかしなきゃ…と思っている時、そんな時に
世之介がそばにいたら、リラックスできる気がする。
そしたら、大切なことを思いだせそうな気がする。
吉田さんの作品はどれも好きだけれど、この世之介シリーズが一番、
身近で優しくて、こうありたいと思える作品かもしれない。
「なんていうことのない日常の会話」だというけれど、
そういう会話が心の中に積み重なっていくと、なんだか心に余裕ができて、
私の人生の中にも暖かい仲間や、好きな人と過ごした何気ない瞬間を思い起こすことができる。
そうした時間の積み重ねが、何かあったときに自然体で、リラックスできるようになる
人生の豊かさなんじゃないかと思う。
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